研究概要 |
本研究は,与えられた論理関数を計算する最小サイズの論理回路のサイズの下界を導出する新たな手法を開発することを目標とするものである.今年度は特に,この問題に対する有望な手法として知られるRazborovが開発した近似法を,従来は単調論理回路,すなわち論理和ゲートと論理積ゲートのみからなり否定ゲートの使用を許さない論理回路に対してのみ適用可能であったものから,一般の論理回路モデルにおいても適用可能となるように拡張することに主眼をおき研究を行った. その結果として,まず,単調論理回路と一般の論理回路の中間的なモデルにあたる,否定素子数限定論理回路,すなわち使用できる否定ゲートの個数を制限した論理回路にまで適用可能となるような,近似法に対する拡張が得られた.また,この手法を用いて,入力として与えられたm頂点無向グラフにサイズがm/2の完全グラフが含まれるか否かを判定する論理関数であるm頂点m/2クリーク関数は,否定ゲートの使用を(1/6) loglogm個以下に制限すると,多項式サイズの論理回路では計算できないことを証明した.更に,こちらも従来単調回路に対してのみ適用可能であった符号理論的論法を用いた下界導出手法についても,否定素子数限定論理回路モデルにまで適用可能であることを明らかにし,この手法を用いて,n変数のソ-ト関数や2つのソ-ト済みのn変数の組をマージする関数は否定ゲートの使用を(1/2) loglogn個以下に制限すると,nを定数倍のサイズの論理回路では計算できないことをも証明した.
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