研究概要 |
本研究代表者は、従来のメッセージパッシング・システムにおけるメッセージを,オブジェクトに格上げしたモ-ビルオブジェクトの概念に基づき,広域ネットワーク環境を前提とする分散プログラミング環境の設計と開発を進めている. 本研究では,モ-ビルオブジェクトの実行を,厳格に管理されたアクセス制御の元で行ないつつ,かつ,アプリケーション・プログラマには可能な限り最大の分散透明性を提供する,モ-ビルオブジェクトの実行管理方式に関する研究を行った. モ-ビルオブジェクトの保護機構を,プログラミング時におけるものと,実行時におけるものとに直交的に分離するという基本アプローチを採用した.前者の保護概念は,従来のオブジェクト指向プログラミングにおける隠蔽機構を用い,後者の保護概念としてはプロテクションドメインと呼ばれる,実行時の保護領域機構を用いることで実現する.アプリケーションのプログラミング時には,オブジェクト指向プログラミングにおける隠蔽概念のみを考慮しながらプログラミングを行う.オブジェクト実行に先立ち,各サイトのシステム管理者またはユーザは,モ-ビルオブジェクトのプロテクションドメインへの割り当て,および,プロテクションドメインにまたがるオブジェクト間相互作用(メソッド起動や属性値アクセスなど)の制御法に関するポリシ-を定める.実行時システムは,このポリシ-に従い,オブジェクトの実行時の振る舞いを監視しながら,オブジェクト実行を行う.本年度は,-プロテクションドメインを-仮想記憶空間として実現し,-プロテクションドメインに複数のモ-ビルオブジェクトを同時にロード可能とするような実行時システムの詳細設計を行うと共に,その実装を進めた.
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