研究概要 |
本研究では,配線ボトルネックにとらわれない次世代VLSIの実現を目指して,情報担体の多重性に着目した「ウェーブパラレルコンピューティング(WaveーParallel Computing)」の概念を提案する.本年度は符号分割多重に基づくチップ内多重通信に関する基礎的検討を行った. 1.直交符号として,M系列,Walsh系列を採用し,各々における符号間の相関(信号のクロストークに相当)を最小化する符号設計を行った.理論計算,アナログ・ディジタル混在回路シミュレーションによる考察の結果,生成回路の規模やクロックノイズ等の混入に対する耐ノイズ性の観点からM系列を擬似直交化させた符号が最も優れていることを明らかにした. 2.シミュレータにより最適設計された直交符号を任意波形発生ボードおよび個別素子を用いて発生させ,これまでに試作した選択回路と接続し,主に積和演算の精度に関して評価を行った.また,本直交符号発生回路をPLDにより実現し,平成8年度奨励研究(A)で設計されたニューラルネット回路に組み込み,良好な動作を確認した.以上の結果より,直交M系列信号をキャリアとして用いる本提案方式が,従来,正弦波を情報担体として用いた方式より変調,復調回路を大幅に削減可能であることを明らかにした. 以上の成果,問題点に基づき,10年度は符号分割多重に基づく画像処理の応用を検討する予定である.特に,M系列が有する代数的性質が画像の直交変換に適用可能である点に着目し,従来全く行なわれていないスペクトラム拡散と画像処理の概念を融合させた新しい画像処理方式を検討し,本方式が劣悪かつ低速の伝送路における画像圧縮,伝送に有用であることを示す計画である.
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