ソフトウェアメモリベース通信機構の研究は特殊なハードウェア通信機構がなくても実用に耐えられるユーザレベルの高速かつ保護され仮想化された通信が実現できることを実証することが最大の目標である。このため、最新のワークステーションと最新の高速ネットワークを用いて、可能な限り高速の実装を行う必要がある。 平成9年度購入予定に挙げていたFast Ethernetインターフェースを持つワークステーション(JU1/140)は予算の減額のために購入不可能であった。このため、やむを得ずEthernetを持つUltraSPARC搭載のワークステーション2台を購入し、10年度の予算でFast Ethernetインタフェースを購入して、このマシン上にメモリベース通信機構を実装することにした。そこで9年度はUltraSPARCよりは一世代古いSuperSPARc搭載でFast Ethernetインタフェースがすでに増設されているワークステーションを使って、Fast Ethernet(100BASE-TX)を用いたメモリベース通信機構を実装した。 その結果、マシン2台の環境において、4byte程度の細粒度データ転送の送信ソフトウェアオーバヘッが3.4μsec、受信ソフトウェアオーバヘッが6.4μsecという値を得た。送信開始から受信終了までのレイテンシは約25μsecであった。また、2台間片方向の最大転送速度は11.2MByte/secであった。これらの値は保護され仮想化されたユーザレベル通信としては市販の専用高並列計算機に優るとも劣らない値である。来年度はより高速なプロセッサにメモリベース通信を移植することにより、さらなる高速化を目指す。
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