研究概要 |
本年度は,まず,枝の始終端が再帰的に有向グラフとなり得るラベル付き有向超グラフに基づくデータモデル(以降,再帰有向超グラフデータモデル)を定式化した.本データモデルにおいて,データを表現する単位はデータ表現グラフである.データ表現グラフは,有向のラベル付きグラフであり、枝の始終端にデータやデータ表現グラフの集合を持つ.次に,再帰有向超グラフデータモデルにおけるデータの構造的な性質について考察した.この結果,データ表現グラフの枝の深さがデータ表現グラフを分解できるか否かを示す指標となることを明らかにした.これにより,複雑なデータを単純なデータに分解して表現できるか否かの判定が可能となった. これと並行して,再帰有向超グラフデータモデルのための格納構造の設計を行った.本データモデルのデータ表現単位であるデータ表現グラフは連結関係と包含関係により表現でき,連結関係はデータ表現グラフ全体で表現する方法が良いこと,ならびに,内包されるデータ表現グラフ間の連結関係を格納する方法は検索性能と更新性能のどちらを重視するかで異なることを明らかにした.本設計に基づいた格納構造を,現有のワークステーション上でC言語を使用して実装中である.本年度は,再帰性を有しない単純な場合の実装を行い,単純なデータに対する性能評価と格納量評価を行った.この結果,検索条件に出現する要素のグラフにおける位置に依存しない性能で検索処理が可能であり,更新性能や格納効率の観点からも良好な性質を持つことを明らかにした. 今後は,再帰性を有する場合の実装,ならびに,現実的な応用に対する性能評価・格納量評価が課題である.
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