1.濃淡画像への情報埋め込み手法の改良 濃淡画像への情報埋め込みの手法として、従来より、離散コサイン変換(DCT)などの直交交換を用いる方法が研究されている。しかし、直交変換の計算は実数領域で行われるが、画像の画素値は一定範囲の整数によって表現される。このため、計算に伴う丸め誤差の問題と、画素値を一定範囲に納める際のオーバーフローと呼ばれる問題が発生してしまう。この2つの問題のため、従来手法では画像にあまり多くのデータを埋め込むことができなかった。本研究では、丸め誤差が発生する位置をビットマップで表現し、その情報を圧縮して秘匿情報と別に埋め込む方法を提案し、この方法によって従来よりも多くの情報を埋め込むことを示した。オーバーフローの問題についても、オーバーフローの起きる画素ブロックの位置の情報を別に埋め込むことで回避できることを示した。この手法はウェーブレット変換などの直交変換を用いる手法を一般に適用可能である。 2.改良方法のカラー画像への適用実験 上記手法をカラー画像に拡張した場合の実験も併せて行った。提案手法と従来手法によってデータを埋め込んだ画像の画質について主観調査実験を行い、本手法が実用的にも有効であることを示した。通常の風景、人物などの写真画像であれば、元のデータサイズの40%程度まで、違和感を感じさせることなく埋め込めることが分かった。 3.他の手法の検討 申請書に記載した当初の予定では、埋め込み手法として、色成分間の関連を考慮した手法、画像の加工を利用した手法、色モデルを考慮した手法などを用いることを考えていた。しかし、これらの方法では、上記1.で述べたのと同様に、埋め込みによって画素データに誤差が発生するといった問題があり、多くのデータを埋め込めないことが判明した。これらの手法に関しては、今後も検討を続ける予定である。
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