本研究の目的は、カラー画像に対する効果的な深層暗号手法を提案することである。本研究では平成9年度、10年度にわたり、以下の点について研究を進めてきた。 1. フルカラー画像へのデータ埋め込みにおける色むらの低減 フルカラー画像に多くの情報を埋め込んだ場合、色むらが発生することがある。これを抑えるためにさまざまな手法を提案し、実験を繰り返した。しかし、いずれの手法においても、色むらを抑えるために導入した仕組みによって逆に埋め込み量が制限されてしまうという問題に直面し、これを解決することができなかった。 2. JPEG方式によって圧縮された画像へのデータ埋め込み手法の検討 フルカラー画像は通常、JPEGなどの非可逆圧縮方式を用いて画像情報が保存されている。このため、単に情報を埋め込んだだけでは復元に際にデータが正しく取り出せない場合がある。そこで、直交変換(JPEGではDCT)を利用して埋め込みを行う際、復元時に情報が損なわれる係数はどこかという情報を、秘密情報と合わせて埋め込む方式を提案した。これにより、JPEG方式によって圧縮された画像への埋め込み量を増大させることができた。 3. 限定色画像へのデータ埋め込み手法の検討 ネットワーク上では、JPEGなどのフルカラー画像だけではなく、GIF形式に代表される限定色画像も同様に広く利用されている。限定色画像に対する埋め込み方式の研究は従来あまり例がないため、フルカラー画像への埋め込み方式の応用として検討を行った。 本研究では、似た系統の色をグループとしてまとめ、その連続をランとみなすことによって、ランレングスを利用した埋め込みを試みた。しかし、あまり多くのデータを埋め込むことはできず、得られる画像の品質も良くない。今後、一層の検討が必要である。
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