本研究では、ネットワーク性能の多様性と動的な変化を考慮して、ネットワーク環境で効率よく問題を解決するための分散アルゴリズムに関する研究を行い、これまでに以下の結果を得た。 1.ネットワーク性能の多様性を考慮した分散アルゴリズムに関する研究: 処理速度の著しく異なる計算機が混在するネットワークにおいては、各計算機が低速な計算機の処理を待つことなく、各計算機の処理速度に応じた時間で問題を解くことが望ましい。これを実現する分散アルゴリズムとして、無待機アルゴリズムがある。本研究では、時計合わせ問題に対して、同期時間最適な無待機アルゴリズムの設計を行った。 2.ネットワーク性能の動的な変化を考慮した分散アルゴリズムに関する研究: (a)モ-バイル・コンピューティング環境での分散アルゴリズムに関する研究:モ-バイル・コンピューティング環境は、ネットワーク性能が動的に変化するネットワークの典型的な例と考えられる。本研究では、モ-バイル・コンピューティング環境において、前後関係保存放送を実現する分散アルゴリズムの設計を行った。(b)適応型分散アルゴリズムに関する研究:ネ-ットワークの性能の変化に自動的に対応できる分散アルゴリズムとして、自己安定アルゴリズムが有用であると考えている。しかし、ネットワークの性能の変化は、ネットワーク全体の性能が同時に変化することは少なく、ネットワークの一部での局所的な変化であることが多いと考えられるが、従来の自己安定アルゴリズムでは、ネットワーク性能の局所的な変化に対しても、その影響がネットワーク全体に及んでしまう。本研究では、いくつかの問題について、小規模で局所的な性能変化に対して、その影響を局所的にとどめ、効率よく解を再計算する自己安定アルゴリズムの設計を行った。
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