本研究では、ネットワーク性能の多様性と動的な変化を考慮して、ネットワーク環境で効率よく問題を解決するための分散アルゴリズムに関する研究を行い、本年度は以下の結果を得た。 1. モーバイル・コンピューティング環境での分散アルゴリズムに関する研究: モーバイル・コンピューティング環境は、ネットワーク性能が動的に変化するネットワークの典型的な例と考えられる。本研究では、モーバイル・コンピューティング環境において、前後関係保存放送を実現する分散アルゴリズム、および、大域チェックポイントを求める分散アルゴリズムの設計を行った。 2. 適応型分散アルゴリズムに関する研究: ネットワークの性能の変化に自動的に対応できる分散アルゴリズムとして、自己安定分散アルゴリズムが有用である。本研究では、時計合わせ問題、k-相互排除問題に対し、自己安定分散アルゴリズムの設計を行った。 また、ネットワーク性能が動的に変化する環境では、各計算機が低速な計算機の処理を待つことなく、各計算機の処理速度に応じた時間で問題を解くことが望ましい。これを実現する分散アルゴリズムとして、無待機アルゴリズムがある。本研究では、時計合わせ問題、および、共有オブジェクトを実現する問題に対し、無待機アルゴリズムの設計を行った。
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