メモリ共有型マルチプロセッサシステムにおける無待機アルゴリズムに関する研究として以下の成果を得ることができた。 1.メモリ共有型マルチプロセッサシステム上での無待機アルゴリズムの設計に関する研究。 メモリ共有型マルチプロセッサシステム上で非同期に動作するプロセッサを協調させる基本的な手法として、各プロセッサが維持管理する局所的な時計の値を同期させる問題がある。本研究では、同期時間と呼ぶある固定された時間だけ停止することなく動作し続けたプロセッサ間の時計を同期させる無待機時計合わせプロトコルを考察した。本研究では、プロセッサ数nに対し、同期時間がO(n)であるプロトコルを提案し、また、同期時間の下界がΩ(n)であることを示し、提案したプロトコルの同期時間に関する漸近的最適性を示した。 2.共有オブジェクトの能力に関する研究。 共有オブジェクトの能力に関する研究として、メッセージの送受信によって情報交換を行うマルチプロセッサシステム上で共有オブジェクトを実現する問題を扱った。これまで、書き込み操作、読み込み操作だけを行える共有メモリセルを実現する研究が行われていたが、本研究では、共有FIFOキューや逐次的振舞を与えることで定義される一般的な共有オブジェクトをメッセージパッシングシステム上で実現する問題を考察し、共有オブジェクトの実現手法や、共有オブジェクトへの操作に関わる時間の下界に関する考察を行った。
|