本年度は、主記憶データベースシステムの耐障害能力向上のため、実験に用いる主記憶データベースのプロトタイプを構築し、これを用いて本研究で提案するバックアップ方式の開発および評価を行った。具体的には、 1.主記憶データベースシステムの構築 研究室の設備であるワークステーション(1GB主記憶、128GBハードディスク、240GBテープ装置)を実験装置として用いた。現在、流通・開発中の不揮発メモリをシミュレートすることにより、これまでに提案してきたバックアップ方式の検証実験を行ない、主記憶を二重化する二重プレーンバックアップ方式を用いる場合、検査点処理時間および回復処理時間がもっとも短くなることが確認できた。 2.マルチメディアデータベースシステムの実装 1.で構築したシステムに地理情報を扱うマルチメディアデータを蓄積し、このデータベースに対して、バックアップ処理中にさまざまな質問処理を行った。この結果、二重プレーンバックアップ方式であっても、主記憶の一部をバッファとする多重バッファ方式であっても、バックアップ処理が質問処理に及ぼす影響はほとんどないことを確認した。 3.マルチメディアデータ処理中の障害に対するバックアップ方式の評価 マルチメディアデータを処理中に意図的に障害を発生させデータを破壊することによる質問処理への影響を調べた。今回実装したマルチメディアデータベースでは読み出し処理が全体の90%以上を占めるため、データ破壊による影響は比較的小さく、数秒の待ち時間でデータを読み出すことが可能であった。今後は、書き込み処理の比重の高い質問処理に対する影響を検証する必要がある。
|