本研究では、高信頼性ネットワークソフトウエアの開発を目指したものである。特にハードウエア障害が生じた後、人間の手を介することなく自動的に回復するネットワークソフトウエアの開発を目指している。故障が生じてシステムが異常な状況になっても、自動的な回復をするシステムは自己安定システムと呼ばれ、近年活発に研究がなされている。本研究の成果として、高水準な分散アルゴリズム記述モデルにおいて、自己安定分散アルゴリズムを開発する枠組を提案し、その有効性を示したことである。 本研究で採用した分散アルゴリズム記述モデルは、通信には状態通信モデル、実行には逐次実行モデルを採用している。状態通新モデルとは、通信は隣接する計算機の内部状態を時間遅れなく、直接に読み出せるモデルである。逐次実行モデルとは、複数あるいは計算機のうち、いずれか一つだけが選ばれて1ステップ実行できるものである。このモデルは明らかに分散システムとはかけはなれているが、アルゴリズムを記述する立場、つまりプログラマから見れば、分散システムの持つプログラミングを困難としている、並行性や非周期性を隠していることになる。 このようなモデルの上で、これまでに提案されているいくつかの分散アルゴリズム、Lamportの分散相互排除アルゴリズム、RicartとAgrawalaの分散相互排除アルゴリズム、Maekawaの分散相互排除アルゴリズム、ChangとRobertの分散リーダー選出アルゴリズム、を記述した。これらのアルゴリズムは耐故障性がないが、高水準モデルを採用することで、容易に自己安定性を組み込むことを示した。またシミュレーションにより、妥当な性能が得られることも示した。
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