研究概要 |
本研究では,整数素因数分解や離散対数問題などの数論的計算問題のアルゴリズム論的計算複雑性を理論的・構造論的に解析し,これらの数論的問題を応用した,新たな公開暗号系の設計を行なう.また,同時に,従来の公開鍵暗号を使ったセキュリティシステムや提案する新たな暗号系の安全性評価に十分な尺度を与えることを目的とする.本年度は以下のような結果を得た. 1.まず,素因数分解を基本としたRSA暗号システムの安全性に関する考察を行った.これまで電子メールのセキュリティプログラムなどで実際に広く利用されているPGPから,どの程度多くの弱いRSA鍵が生成されるかについては,あまり知られていなかった.我々は計算機実験により,0.15%のシステムについては,パーソナルコンピュータ程度の計算能力で15時間以内に鍵を見破ることができ,1%については,同程度の計算能力で50日以内に鍵を見破ることができることをICICS97で発表した. 2.ヤコビ多様体に対する離散対数問題の難しさに基づく超楕円曲線暗号システムの安全性について議論を行った.これにより,本システムの安全性と実装の容易さを示すことに成功した.本結果についてはPKC98に於いて発表を行った. 3.種々の離散対数問題に基づく暗号システムの強度の比較を行った.key exchange scheme,non-interactive oblivious transfer scheme,public-key cryptosystem,conference-key sharing scheme,3-pass key-transmission schemeの関係を明らかにした.また,それらのシステムが同程度の安全性をもつための条件を示した. 本年度は従来のシステムの安全性評価を中心に行ってきたが,新たな暗号系の開発も進んでいる(日経産業新聞に掲載).来年度は新システムの提案を中心に研究を行っていく予定である.
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