研究概要 |
論理最適化システムの性能は,定数個のテスト回路からなる標準ベンチマーク集合に対して,素子数や段数をどれだけ減らせるかで評価されてきた.しかし,ベンチマーク集合による評価では,「テスト回路を意識したシステム開発」という不正を防止できないという欠点があった.本研究では,次の二つの目標を設定し,研究を進めて来た.(1)素子数や段数を増やせば計算能力が真に増加するという「回路計算量の階層性」を理論的に証明する.(2)この理論的裏付けをもとに,「素子数と段数の最適性を証明できる具体的関数」を見つけ出す.この関数を計算する回路を論理合成システムで構成し,素子数や段数が最適値にどれだけ近いかを検討することでシステムの性能を評価する.平成9年度は,(1)を主として以下の成果を得た. 1.計算量階層の証明の最初の目標として,直列計算における時間量と領域量に関する階層性の証明を目指した.領域量については従来の結果を大幅に改善する「稠密な階層性」を証明することに成功した(第3回日韓合同ワークショップ(平成9年7月福岡市)にて発表).また,時間量についても同様の改善が可能であることを証明した(国際会議への投稿を準備中). 2.回路計算量については,対数時間一様と呼ばれるある種の論理回路族の計算量階層に関する論文を,国際学術雑誌(SIAM Journal on Computing)に投稿中である.また,1.と2.の成果は平成10年4月に開催される電子情報通信学会第11回「回路とシステム(軽井沢)ワークショップ」にて発表を予定してる.
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