研究概要 |
本研究の目的は様相論理における決定問題を解く基本的手法である濾過法を利用して、暗黙知の構造を論理的に定式化し、人間の認知に対する一つの有限的解釈を与えることであり、2年計画で研究が遂行される。本年度は (1)暗黙知からの認知構造の濾過法に基づく定式化と人間の認知の有限性に関する考察 (2)暗黙知ベース・システム拡張の準備 に関して研究を行った. まず、前者に関しては,暗黙知を表現する近接的対象としての無限可能世界集合から、ゴールまたは証拠として与えられた関心のある命題集合に利用して、濾過法によって有限個の同値類からなる遠隔的対象,すなわち高階な可能世界が導かれる過程を論理的に定式化した.また,関心のある命題集合が矛盾する場合は極大無矛盾な命題の部分集合を選択すれば複数の同値関係を設定でき、遠隔的対象の階層を構成できることを示した.これはエージェントをいくつかのサブエ-シェントに分割することを意味し,人間(エージェント)は分割によって無限の対象を有限的に把握し,各分割された対象を扱うサブエージェントを生成することで問題を解決するという考え方を理論的にモデル化できたといえる. 後者に関しては,昨年度奨励研究(A)の援助によって所属講座のワークステーション上で構成した画像検索を対象とする暗黙知ベースシステムを同等のスピードを持つパソコンに移植した.更に、本システムを画像ではなく音楽を対象とする検索に適用できないか検討し,十分な見通しを得た.これによって,次年度の目的である,移植した暗黙知ベース・システムを画像および音楽のデータ自体を扱うシステムに拡張することが,十分可能な段階に達したと考えられる.
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