本研究課題では、1.理想的な鍵盤楽器の演奏動作を練習者に提示すること、2.演奏動作のシミュレートによる人の演奏に近い自動演奏を実現すること、の2点を目的として、任意の音列に対する手と指の演奏動作の自動生成アルゴリズム、ならびにその3次元動画表示手法に関する研究を行っている。 平成9年度は以下に示す事項について研究を行い、5学会、のべ7件の学術講演会で研究成果を発表した。なお、情報処理学会からは本研究の発表に関し、第55回全国大会大会奨励賞を受賞。 1.3次元センサ、タッチセンサ付鍵盤、ビデオカメラを用いた人の演奏動作を解析 鍵盤楽器の演奏がどのような手の動き、各指の各関節角変化により行われているかを明らかにした。 2.仮想空間における演奏シミュレーションシステムの開発 OpenGLグラフィックライブラリを用いた3次元動画表示システムを作成した。最初は2オクターブ鍵盤(25鍵)、右手のみのシステムで基本的な動作を確認し、ついで実際のピアノと同等の7オクターブ鍵盤(88鍵)を備え、両手演奏が可能なシステムに拡張した。 3.演奏動作生成アルゴリズムの検討と開発 楽譜データ(各音符の高低、並び方)、手の形状・寸法、手指の制約条件(指の開き角の限界等)をもとに、演奏動作を実現するための、指使い、手の位置、指開き角等の導出手法を考案した。 4.シミュレーションによる演奏結果の評価 譜面データを本システムに与えて実際に演奏を行わせることにより、上記アルゴリズムを評価した。 平成10年度の予定 1.運動速度を動的に制御することにより、従来の自動演奏では困難なニュアンスの表現を試みる。 2.打鍵の運動エネルギーを音の強弱に反映させることにより、情感豊かな演奏の実現を目指す。 3.手の上下方向の動きなどをシミュレーションに導入し、よりリアルな演奏動作の生成を目指す。 4.熟練者の演奏動作と比較しながら、作成された演奏動作の評価を行う。
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