研究概要 |
本年度は,人工生命による分子進化のモデル化と遺伝子情報の統合解析のため,以下のシステムの開発を行った. 1.生物の遺伝子情報の収集・統合システム 既知の遺伝子に関する情報は,GenBank等のDNA塩基配列データベース,PIRやSWISS-PROT等のアミノ酸配列データベース,PDB等の立体構造データベースに分散して蓄積されている.そこで,これらの情報を,遺伝子ごとに統合し,多様な角度から比較・検討できるシステムを開発した.このシステムから,人工生命の設計に必要な基礎的なデータを得ることができると考える. 2.配列類似度による遺伝子分類システム 配列類似度により遺伝子を類似したクラスタに分類するシステムを開発した.本システムの特徴は,進化の過程で遺伝子配列に生じる変異の蓄積により,限定された類似性しか示さない遺伝子間でも,遺伝子相互の類似性を表したグラフを解析することにより,配列類似度に基づく遺伝子の分類が可能なことである.約4800個ある大腸菌の全遺伝子をこのシステムにより分類した結果,全体の約半数の遺伝子が何らかのクラスタに分類できている. 3.遺伝子の進化過程の再考察システム 2.の遺伝子分類システムによる分類の結果,一つのクラスタに分類された遺伝子は相互に進化的な関連を持つと考えられる.そこで,遺伝子配列に生じる変異をモデル化した確率モデルに基づき,最尤推定により遺伝子の進化過程を再構成するシステムを開発した.本システムの特徴は,可能な進化過程の組合せは遺伝子の数が増えると急激に増大するが,その中でも尤度最大の過程を探索するのに遺伝的アルゴリズムを使用していることである.
|