研究概要 |
物理学・分子生物学等の分野において,大規模知識データベースが近年急速な発展をとげている.そこで,本研究ではこのような大規模科学データベースに適用可能な新しい学習法を研究した.代表者等が開発した学習アルゴリズムである「極小多重汎化」技法を知識ベースを対象に拡張し,高速な学習手続きを開発した.また,開発した手続きを理論的かつ実証的に解析し,この手法の能力と適用限界を調べた.これらを通じて,大規模知識データベースを対象とした知識獲得システムの実現方法をあきらかにすることを目指して研究をおこなった. 平成9年度は,具体的にはつぎの項目の研究を実施した. (1)まず,オブジェクトを原子論理式の拡張ととらえ,与えられたデータから未知の規則を複数の原子論理式の選言として発見する問題を考えた.エキスパートとの対話による知識獲得をモデル化することを考え,汎化手続きに質問による積極的な情報収集能力を許し,効率よい知識獲得手法を与えた. (2)さらに,(1)の枠組みでの知識獲得問題を理論的に解析し,学習可能性と限界を正確に特徴づけた.この解析によって,効率を要求したとき,質問による情報収集能力が本質的に必要であることがわかった.また,(1)で提案した知識獲得手法がほぼ最適な手法であることも示した. (3)オブジェクト指向データベースに論理型言語による演繹機能を付加した場合を考察し,複数の再帰節からなる一階述語ホーン式の学習が効率良くおこなうことができることを示した.これは,論理プログラムの部分族としては,もっとも一般的なものの一つであり,演えき規則の獲得のための基礎的な手法を与えるものである. (4)一方で,積極的な情報収集が許されないような状況も考えられる.このとき,比較的単純な述語ホーン節の部分族を仮説として,高速に知識獲得をおこなう手法を与えた.
|