本研究では、人工現実感を利用して、仮想空間内の対象物を任意の断面で観察できる手法とそのシステムを提案した。さらに、具体的なアプリケーションとして、携帯できる小型ディスプレイを用いた医療画像の視覚化を実現した。この医療画像視覚化システムは、実際の医療担当者に試用から、一定の評価を得た。 仮想空間内に配置された対象物の断面を取得するためには、切断平面と対象物との交線(共有点の集合)を抽出する必要がある。そこで、切断平面を仮想空間内にマッピングし、マッピングされた平面を構成する点集合を作成する。この集合に含まれる対象物の画素値を抽出する。これにより、切断面のサイズ、対象物の大きさや個数などに依存せずに、常に定数計算量で切断面の作成が完了する。 また、この研究の具体的なアプリケーションとして、医療画像の1つであるMRI画像の視覚化を行った。MRI画像は生体を一定方向、一定間隔で切断した複数の断面画像(スライス画像)から構成される。このMRI画像を仮想空間内に一定間隔で配置しておき、本システムで提案した切断面作成の手法を適用することでMRI画像を任意に切断することが可能となる。さらに、小型の携帯ディスプレイと三次元位置センサーを使えば、携帯ディスプレイの位置に応じた切断面を構成することができ、より直感的なMRI画像の観察が行える。携帯ディスプレイの大きさが既知であれば、MRI画像スケールを考慮し、実物大のMRI画像を観察することもでき、医療分野での効果的な利用が期待される。
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