研究概要 |
実用的な学習・認識システムと言えば,近年までは,伝統的に人工知能の分野で取り組まれてきた記号処理によるもの以外にはないといっても過言ではなかった.ところが,記号とパターンというキーワードを軸に,記号処理に制限しない新しい流れが生まれたようである.しかし実は,その新しい流れというのは,神経回路モデル研究として数10年間にわたって脈々と続けられてきたものに他ならない. 一方,神経回路モデル研究の流れの中にも,実用的なシステムへの適用を目指すには記号的な考え方が不可欠であるという問題が浮き彫りにされつつあるところである. 学習・認識システムの研究に神経回路モデルを活用する際には,時空間情報をいかに処理するかが重要になる.しかし,これまで研究されてきている神経回路モデルは静的な情報には向いているが,動的な情報(時間情報)を処理するには向いていない. そこで,時間情報に依存して動作する神経素子を付加した神経回路モデルを設定し,その時空間情報処理能力を調べた.神経素子には,パルス頻度に応答する古典的なニューロンモデルと,パルスタイミングに応答するパルスニューロン(spiking neuron)モデルを用いた. 性能の高い情報処理を望む場合,古典的なニューロンモデルだけで構成するには複雑な動作をする高次ニューロンを仮定しなければならなかったが,これら2種類のニューロンを組み合わせたモデルではそれぞれの種類のニューロンは単純なままでも同等の処理ができる可能性が見えてきた. 今後は,この方向の研究をより発展させ,時空間情報を自然に処理できるモデルを考察してゆく.
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