人間が認知活動を行う環境は通常動的であり、そこでは多くの目標を一定の時間内で処理する事が求められる。この動的環境下での認知行動を研究するために、本稿では動的環境としてアクション型に分類されるビデオゲーム「パックマン」を材料として、必要なスキルや戦略、およびそれを獲得していく過程をパフォーマンスや状況への記憶などに関する実験を行って調べてきたが、今回の研究では被験者に10カ月に渡り継続的にゲームをプレーさせることで熟達化の過程を、どのような戦略を採用するようになるのか、それが記憶される情報にどのような影響を与えるのか、などの視点から分析した。 その結果、以前の実験において、継続的にゲームをプレーすることなく現れた熟達度の差は、ゲームの中の操作対象(パックマン)を上手に操作できるか、という一般的な能力の差であったのに対して、今回の継続的プレーにより獲得されたものは、よりこのゲーム(「パックマン」一般ではなく、この実験のために用意された「パックマン」)に限定された戦略などであったことが判明した。また大局的な戦略だけではなく、局所的な戦略においても熟達を表すものがみられている。現在、この局所的戦略のコード化することでその変化の分析を試みている。これらの結果は97年の日本心理学会大会で発表された。同時に一部の試行においてアイマークレコーダを用いて視線データを収集しており現在データを分析中であり、結果を98年の日本心理学会大会などで発表する予定である。
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