本研究では、物体の位置関係や経路などの空間的な情報を人間に伝達するという問題について考えようとしている。現在利用できる情報伝達のための手段としては、通常の言語からはじまってCGやバーチャルリアリティなどまでありえる。重要なのは表現手段よりもむしろそれらの表現で表す情報を誰が生成するのかということである。ここで考えようとしているのは、人間が説明のためのデータを入力するというのではなく、自動生成を仮定している。 人間は世界についての情報をかなり抽象化した形で内的表現しているはずである。このイメージを本研究ではメンタルイメージと呼ぶ。人間が他人に道順や場所を教える場合、自分のメンタルイメージを基に説明を生成し、その受け手は、与えられた説明を基に説明者のメンタルイメージを自分の中にも再構成しようと試みるわけである。ここで、説明の良さはその説明で如何に自分のイメージに近いものを相手に想起させうるかということにかかってくる。 本年度は、このメンタルイメージの基本的性質を考察するための準備として地図情報の認識/生成や機械組立の説明生成について考え、いくつかのシステムを試作した。地図情報に関しては、地図情報のモデル化、略地図と説明文の自動生成、経路移動シミュレーションなどを試みた。これは主に2次元的な空間概念に関るものである。また、3次元的な空間概念を扱うものとして機械組立の説明と説明図、アニメーションの生成などのシステムを作製している。 今後、これらのシステムを用いた実験を基にメンタルイメージの表現方法について検討を進め、そこから得られる知見をシステムへフィードバックしていく予定である。
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