本研究を通して扱う線形相補性問題 (Linear Complementarity Problems.LCP)とは最適化理論の基礎である線形計画問題、ポート・フォリオ選択問題を応用例にもつ2次計画問題、ゲーム理論での均衡点を求める問題等を実例とする、数理計画の分野の基礎的な数理モデルである。本研究では、この線形相補性問題というモデルに対し、組合せ的な基本性質を探りつつ、新しい解法の提案を行い、それを計算機プログラムとして実現しようと試みる、理論と実践の両面からのアプローチを目的とする。 具体的な学術的な果としては、以下の3つを挙げる。まず第1に「Tne Existence of a Short Sequence of Admissible Pivots to an Optimal Basis in LP and LCP」という題目で、International Transactions of Oprations Researchと呼ばれる論文誌に掲載されたこと。この結果は、上の記述に従えば、ある条件の下では、任意の暫定解から最適解、或いは均衡解への最短の経路が存在することの証明であり、その解を求めるアルゴリズムの存在を示唆する重要な結果であると考えられる。次に.「EP Theorem and Linear Complementarity Problems」という題目で、Discrete Applied Mathematicsと呼ばれる論文誌に掲載されたこと。この結果は、一般には解くことが非常に難しいとされるクラスのLCPに対しての新たな解法の提案している点が重要である。最後にこれらの結果をまとめて、平成9年度にスイスで行われた第16回国際数理計画シンポジウムで発表したことを記述しておく。
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