現在、電子マネーを明確に規定する金融法制度は現存せず、様々な規制や法制度が検討されている. しかし、国や中央銀行が政策的に各電子マネーを個別に統制することは望ましくない. 金融論の理論経済学では、ハイエクの「貨幣発行自由化論」があるように、適切な情報を公開すれば、市場競争による自然淘汰されると言われている. 電子マネーも、真に定着する金融システムとなるためには、こうした自然な競争による淘汰が、望ましい姿である. この観点で、どのような情報を公開すれば、適切な電子マネーの市場競争が起きるかを検討する研究を行った. 本年度は、電子マネーによる金融システムの制度、動向などの調査を行い、モデルの構築を行った. この調査やモデル構築によって、電子マネーの流量を現金準備高や電子マネーの発行高を公表することによって制御できることが明らかになった. さらに、電子マネー利用者は受け取った電子マネーを現金化することが殆どないため、金融機関にとっては普通預金と同じ性格を持つ. このため、支払準備率として制御するのも一つの方策であることが分かった. 平成10年度は、このモデルに、国際間取引による為替変動、金利相違などを組み込み、シミュレーションによって、インターネット時代の国際的な電子マネー金融システムについて研究する. なお、研究時間と学会投稿締め切りのタイミングが合わなかったため、この研究成果は本研究室の成果報告書としてはまとめたが、外部発表は平成10年度に行う予定である.
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