遠隔環境では対象物に対してロボットアームを介した操作のみが許される。したがって、遠隔地にある柔らかい対象物のモデルを取得するためには、遠隔のアームが物体に対して作用する力とその際の変形とから変形特性を推定する必要がある。このような背景から、本研究では、物体の変形の非破壊的な力‐変形関係の計測に基づく変形モデルの取得手法について検討した。 変形モデルの取得は、モデルパラメータの同定の考え方に基づいておこなうものとした。すなわち、計算機の内部に変形モデルを構築し、これと実際の物体とに同一の変形操作を行った場合の力‐変形関係の誤差を定義し、様々な変形操作に対してこの誤差を最小とするモデルパラメータを求める。 本年度は変形モデル取得のためのアルゴリズムの実装と実物体に対する変形特性計測実験のためのシステムの構築を行った。アルゴリズムの実装にあたっては、同定のための具体的な手順が検討された。まず、計算機モデルとしては有限要素法による線形弾性モデルを仮定した。また、誤差は実物体および計算機モデルに同一の力を作用した場合の変位の差のすべての試行変形操作に対する自乗和として定義した。なお、対象が固定されているなどの境界条件は既知であると仮定し、また、力‐変形関係の計測方法としては、1点に力を作用し同一点における変位を計測する場合を想定した。誤差を最小とするパラメータの推定は降下法による探索で実現した。さらに、計算機による変形計測シミュレーションの結果を用いて同定の実験を行うことで、このアルゴリズムの動作を確認した。 実物体の変形特性を計測システムの構築では、力センサと位置センサを組み合わせることで、力と変位を同時に計測するデバイスを試作した。
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