研究概要 |
本研究の的は,安全かつ実現容易な,多値画像に対するデジタル透かしを提案することである.前年度までの研究において,輝度値領域をいくつかの部分領域に分割し,各部分領域に0または1のいずれかを対応させる方式を提案していたが,平成9年度はこの方式を基に,領域分割の方法,0-1値の対応方法について改善を行った.例えば,従来法では均等な領域分割を行っていたが,人間の視覚特性を考慮すると,極端に明るいところや極端に暗いところの領域を比較的大きくしたほうが,透かし埋め込み後の画像はより自然なものとなり,埋め込んだ画像の検知が困難になる.様々なパラメータについて実験を行い,その結果得られる画像の自然さについて評価を行った. また,平成9年度の研究遂行過程において様々な考察を行った結果,単なる画像に対する透かしのみでは,例えば電子図書館のような形態においては,実用上あまり有用でないとの結論に達した.そこで,当初の目的を包含する形で,画像や音声のようなマルチメディアデータを内包するような,デジタル文書イメージに対するデジタル透かしについて研究を行った.文書イメージは通常,PostscriptやPDFといったページ記述言語によって記述され,ある種のプログラムとしてとらえることが可能である.そこで,出力イメージを変化させない範囲でプログラムの一部を変化させることにより,情報を埋め込む手法を考案した.考案した手法は,コンパイラ等の最適化技術をもってしても除去することは困難であると考えられるため,不正ユーザによるカジュアルコピーを防止するのに適している.また提案手法は,CプログラムやJAVAプログラムのような汎用プログラミング言語に対する透かしとしても利用可能である.
|