研究概要 |
本研究によって以下の理論的成果を得た. 1.問い合わせプログラム中に更新操作のないデータベーススキーマに対する型検査問題が,クラス階層の高さを高々1に限定しても決定不能であることを,Postの対応問題からの還元により示した.具体的には,与えられたPostの対応問題の解が存在するときかつそのときのみ実行時型エラーが発生するような,上記の条件を満たすデータベーススキーマを構成できることを示した. 2.問い合わせプログラムが停止性を満たすデータベーススキーマに対する型検査問題が,クラス階層の高さを高々1に限定しても決定不能であることを,Turing機械の受理問題からの還元により示した.具体的には,与えられたTuring機械Mとそれへの入力χに対し,Mがχを受理するときかつそのときのみ実行時型エラーが発生するような,上記の条件を満たすデータベーススキーマを構成できることを示した. これにより,文献[1]では未解決であったすべてのデータベーススキーマの部分クラスに対する型検査問題の計算量が得られた.そして,既知の結果と比較することにより,型検査問題を難しくする要因として(a)クラス階層があること,および(b)問い合わせプログラム中に再帰があることが挙げられるという結論が得られた.さらに,問い合わせプログラムが停止性を満たす場合は,(c)問い合わせプログラム中に更新操作があることも型検査問題を難しくするという結論が得られた. [1]Y.Ishihara,H.Seki and M.Ito,"Type-Consistency Problems for Queries in Object-Oriented Databases," Proceedings of the 6th International Conference on Database Theory,Lecture Notes in Computer Science 1186,pp.364-378,Jan.1997.
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