本研究の目的は、電子カルテとして使用できる3次元知的マルチメディアデータベースのプロトタイプを開発し、実際に患者データを入力、検索し性能を評価することにある。従って本研究では、1)臨床医学情報として何が含まれ、それらがどのように使われているかを明確にし、要求モデルを作成する、2)そこからオブジェクト指向技術を用いて、ドメインオブジェクトモデルを作成する、3)オブジェクト指向プログラミング言語、オブジェクトデータベースを用い、3次元マルチメディアデータベースを構築する、4)臨床データを入力し、構築してモデル及びソフトウェアの性能を評価する、5)概念学習システムを統合し、臨床医学的に意味のある新しい情報の発見を試みる、の5段階の研究目標を設定している。 そのうち平成9年度にはこれまで要求モデルの作成、分析モデルの作成、3次元視覚化のクラスライブラリの開発を行ってきた。要求モデルは病理解剖報告書、病理組織診断報告書、病理細胞診断書などをもとにヤコブソンのユ-スケースモデルを作成したが、特に情報のセキュリティを重視したモデルを構築した。分析モデルはさらに人体解剖などの3次元構造の知識や臨床経過などの時間による変化などを背景知識として上記の要求モデルに基づきUMLを用いて作成した。さらにプロトタイプの実装としてはWindowsNT4.0上で、純粋なオブジェクト指向言語であるSmalltalkとC_<++>を用い、グラフィックライブラリとしてはOpenGLとVisualization Toolkitを用いてオブジェクト指向データベースMatisseと接続したプロトタイプを開発した。特に3次元情報の描画に関する性能評価ではPentium200クラスのマシンであれば十分な速度が引き出せることを確認した。
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