既住の研究において、包除被覆がファジイ積分(ショケ積分・多重線形ファジイ積分)で表現されるシステムの構造解析に関して重要かつ有益な概念であることが示された。また、極めて困難であった包除被覆の同定問題に関してもメビウス反転の概念を通してファジイ積分を表現することによって、安易に同定する方法論が提案された。本研究では、メビウス反転を通して様々な概念(証拠理論・ファジイ積分論・ゲーム理論)を概観し以下の様な知見がえられた。(証拠理論における確信関数、ファジイ積分論におけるファジイ測度、ゲーム理論における特性関数などの)集合関数に対するメビウス反転はその集合の固有(プリミティブ)な価値(力)を表現していると解釈できる。そして、 1.確信関数はメビウス反転の総和として表現されること、 2.ファジイ積分は関数の集合上でのある評価とそこでのメビウス反転との積を全ての集合に対して総和をとったものであること、 3.シャプレイ値や相互作用表現は、メビウス反転の平均的分配の総和であること、 と解釈できる。 つまり、これらの集合関数ベースの意思決定問題を扱う理論においてはメビウス反転は共通の解釈をもって議論されることが明確になった。 一方、アプリケーションソフトに関しては、一般のパーソナルコンピュータにおいて広く用いられている表計算のソフトウェアや統計パッケージで本研究で得られた知見が利用できるようになった。
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