本研究の目標は、歪度を考慮した資産評価モデルの構築である。この目標に当たって、投資家個人のポートフォリオ最適化問題に基づいた均衡条件を導出する必要がある。すなわち、個別の最適化問題の最適性条件を、市場全体に拡張することにより資産評価式を導出するのである。しかしながら、研究の過程において、歪度を考慮した最適化問題が非凸計画問題として定式化されること、およびパラメータが3つ存在することにより、その最適性条件から従来と同様な手法での均衡条件の導出が困難であることが明らかになった。通常の平均-分散モデルでは、最適性条件がパラメータについて線形な関係を満たすのに対して、本モデルでは非線形な関係となり解析が困難となるのである。これを解決するには、効用関数を特定化するなどの付加的な情報が必要となるが、その場合、特に三つのパラメータだけで評価を行う意味が失われてしまう。 これは、本来無限次元で表現されるべき効用関数を有限な個数のモーメントで近似する場合に必然的に生じる問題であると言える。よって、研究の方向としては、当初の3パラメータのみを考慮したモデルから、これらの3っつのパラメータの情報を全て含む分布そのものを対象とするモデルに拡張を行った。このモデルにおいては、目標値とその確率を制御の対象とする。本年度においては、分布が一般的な離散分布として与えられる場合と、分布の歪みを生み出すファクターが一つの場合においてモデルを構築し、その解法を提案した。また、それを用いていくつかの数値実験を行っている。
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