本研究の目標は、歪度を考慮した資産評価モデルの構築である。第1段階として投資家個人のポートフォリオ選択問題の最適性条件より平均・標準偏差(分散)・歪度間の関係を導出した後、第2段階として市場全体の均衡条件を分析する計画であった。 第1段階については、i)平均・分散型の均衡条件同様、投資家は平均・標準偏差(分散)・歪度空間上の実現可能ポートフォリオ集合から生成される“効率的フロンティア"上のポートフォリオを選択すること、ii)実現可能ポートフォリオ集合が平均・標準偏差(分散)・歪度空間上における安全資産が対応する点を根とする錐であること、iii)要求する期待値と標準偏差間の比率が一定かつ共通の投資家は、“効率的フロンティア上"に存在する参照ポートフォリオと安全資産を組合せて保有すること(2資産分離定理)、がわかった。 しかしながら、第2段階の市場全体の均衡条件を導出するにあたっては、平均・分散型の場合にくらべて有意義な結果を得ることができなかった。これは、パラメータが3個のため、投資家全体に共通する参照ポートフォリオを設定することができないこと、投資家個人のポートフォリオ選択問題が、非凸型の数理計画問題となり、解析が困難であったことによる。 また、このテーマから関連して得られたものとして、当初の3パラメータのみを考慮したモデルから、これらの3っつのパラメータの情報を全て含む分布そのものを対象とするモデルに拡張を行った。このモデルにおいては、目標値とその確率を制御の対象とする。分布が一般的な離散分布として与えられる場合と、分布の歪みを生み出すファクターが一つの場合においてモデルを構築し、その解法を提案した。また、それを用いていくつかの数値実験を行っている。
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