本研究の成果は次のように要約される。 本研究では、災害発生時における広域物流システムがもつ問題点を明らかにし、その知見をデータベース化するとともに、災害情報システムとの統合を目指したシュミレーション・システムの開発をおこなった。阪神・淡路大震災では、各種交通施設の破壊などによって交通ネットワークの動脈部分が分断されたために、代替物流ルートの確保、被災地内における緊急物流システムの構築などの諸問題が発生した。そこでまず災害時における物流を、被災地外から被災地内への救援関連の物流、被災地域内の物流、被災地を通過する物流の3種類に分類し、それぞれについて調査をおこない実態を把握した。つぎに、災害時における物流の主たる担い手である道路交通施設の耐震性評価のために、阪神・淡路大震災における神戸・大阪地域の阪神高速道路公団の道路施設について、その被害状況と復旧状況を地理情報システムに入力し、データベース化をおこなった。このデータベースを用いて、高速道路施設の地震損傷曲線を算出し、シュミレーションに向けた基礎的情報の整備を完了した。最後に、これらの情報を統合した道路交通システムの地震時機能性能評価システムの開発をおこなった。OD交通量を仮定した任意の道路ネットワークに対して想定地震を設定し、モンテカルロ法によるシュミレーションによって被災後のネットワークの状況を構築する。被災後のネットワークの機能性能を評価する指標として、被災前後の当該ネットワークにおける総走行時間の比を採用し、想定地震下におけるネットワーク内各施設の重要性評価をおこなった。災害復旧期における効率的な広域物流システム構築には、災害時におけるさまざまな交通需要を反映した復旧優先順位の決定、あるいは事前の耐震補強計画の立案などの意志決定が必要であり、本システムはそれらの意志決定に基礎的な情報を与えることができると考える。
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