本研究の目的は、積雪物理量の一つである重量含水率を手軽に精度良く測定するための電子計測システムについて検討し、実際に動作可能な装置を開発することである。今年度は、前年度に試作した室内動作試験用の電子計測型積雪含水率計を、野外での使用を考慮して改良・改善することを検討した。 冬期の野外における使用を考えた場合、出来るだけ単純かつ少ない作業量で一連の計測が完了できることが望まれる。そこで、装置自体の機構部分を工夫して一つのアームを操作するだけで一連の計測を完了できるようにした。また、含水率計の内部に組み込んだマイクロ・コンピュータにLCD表示器(キャラクタ・ディスプレイ)を接続した。そして、そのLCD表示器に適当な指示を表示することで、初心者でも簡単に含水率が測定できるように改善した。内部の電子回路としては、多機能で高性能なA/D変換用CMOS-ICを用いて設計をし直した。それにより、これまでよりも少量の部品で構成することができ、小型軽量化および低消費電力化を実現できた。全体の構造としては、断熱材を用いて保温効果を高めた。これにより、余計な熱量の授受を抑えることができ、測定精度を向上させることができた。 以上の内容に基づいて製作された含水率計を用いて、測定精度を確認した。測定精度の確認には、熱量を正確に把握することのできる水と湯を混合したときの平衡温度の実測値を理論値と比較した。その結果、35〜40度程度の平衡温度に対して、最大でも0.2度の誤差範囲内に収まることを確認した。また、含水率0%の自然の雪を採取し、室温が約20度の実験室内に持ち込み、約5分間隔で採取した雪から一部を取り出しては含水率を測定した。その結果、室温にさらされている雪の含水率が0%から徐々に上昇していく傾向を捕らえることができた。
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