高温プラズマではしばしば、磁気エネルギーが熱および運動エネルギーに突発的に変換される現象が観測される。本研究ではこうした電磁流体力学的カタストロフ過程の物理を、最小エネルギー原理と数値シミュレーションに基づいて研究した。本研究においては、太陽コロナにおける典型的な磁場配位である磁気ループシステムを念頭に置き、太陽表面運動が磁気ヘリシティをシステム内部へ供給する場合の非線形ダイナミクスを計算した。その結果、磁気レイノルズ数の大小によって2つの異なるダイナミクスが発生することが明らかになった。磁気レイノルズ数が小さな場合、供給されたヘリシティは拡散によって失われる定常的な拡散平衡状態が実現する。しかし、磁気レイノルズ数の増加に伴い、拡散平衡状態の磁気ヘリシティも増加するため、磁気ヘリシティが臨界値を越えるとシステムは磁気アーケードモードに対して不安定となる。それゆえ、磁気レイノルズ数が大きな場合、蓄積された磁気ヘリシティは不安定性の結果としての磁気リコネクションを通してシステムの外に放出される。この過程は磁気ヘリシティの供給がある限り続き、ダイナミクスはある種のリミットサイクルを描く。その結果、磁気ループ内部の磁気ヘリシティ量の増加は磁気レイノルズ数の増加と共に飽和してしまう。すなわち、磁気レイノルズ数の大きな高温プラズマでは、間欠的なヘリシティ放出が能動的に生じるため、蓄積できる磁気ヘリシティの容量は有限の値に制限されることがわかった.
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