電気伝導性の流体、即ち磁気流体(MHD流体)が流れることににより自分自身で磁場を作り出す現象をMHDダイナモと呼ぶ。MHDダイナモは地球などの惑星や、太陽の磁場の起源と考えられている。特に興味深いのは地球の双極子磁場である。地質学的データからその双極子モーメントの南北の極性が平均して数十万年に一度逆転していることが判明しているからである。本研究の目的は、この双極子磁場逆転の物理機構を計算シミュレーションの手法で明らかにすることである。用いる数値モデルは次の通りである。回転する二つの球面に挟まれた球殻状容器を考え、この中にMHD流体が閉じ込められているものとする。内側の球面は高温、外側の球面は低温にそれぞれ保たれている。球の中心方向には重力が働いているため、このMHD流体は熱対流運動をおこす。この系の時間発展を、数値シミュレーションで追跡する。その結果、MHDダイナモの効果により、強い双極子磁場が自発的に生成、維持されることが分かった。そして、予想通り、あるパラメータの元で、この双極子磁場が突然逆転する現象を観測した。そのふるまいは地球磁場で観測されているものと同様に、長い時間、双極子モーメントが安定に連続した後、突然そのモーメントが逆転するというものである。このシミュレーションデータを詳細に解析したところ、逆転時には北半球と南半球にそれぞれ一つづつある磁場のフラックスがお互いに近づき合い、赤道面で融合することが分かった。そしてこれらのフラックスがお互いにキャンセルした後、新しいフラックス対が現れる。これらのフラックスの磁場は始めにあったもの逆の向きを持つため、双極子モーメントが逆転することになる。このように磁場フラックス対の融合で双極子磁場の逆転が理解できることが分かったことが、本年度の研究の最大の成果である。
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