磁気流体(MHD)緩和現象とそれに関わる磁気リコネクションを調べるためのプラズマ合体実験では、傾斜モードを安定化して合体を進行させ磁場反転配位(FRC)を実現するために、主軸に平行に中心導体を挿入し、さらにそこに電流を流してプラズマにトロイダル磁場を印可する手法がとられている。中心導体が細くアスペクト比が1に近いコンパクトな配位の場合、プラズマ電流に比べ非常に弱いコイル電流で、n=1の傾斜モードやシフトモードが安定化されることが実験的に示されているが、理論的な考察はこれまで十分にはなされていなかった。そこで我々は、本研究の2年計画の初年度にあたる平成9年度に、プラズマ合体で生成されたコンパクトトーラス配位に外部トロイダル磁場を加えた場合の線形安定性とその不安定モードの非線形発展を、新たに開発した3次元線形および非線形MHDシミュレーションコードを用いてそれぞれ調べた。その結果、コンパクトトーラス配位におけるバル-ニングモードの非線形シミュレーションに成功した。得られた結果をまとめると、(1)アスペクト比が小さい場合、弱いトロイダル磁場を印可することで傾斜モードが安定化されること、(2)しかし、それでもバル-ニングモードが不安定で残る場合があること、(3)どちらのモードが成長しても、磁場配位が崩壊する危険があること、が明らかとなった。今後は、バル-ニングモードに対しても安定でかつ高βな配位を実現できる新しい合体手法を、3次元シミュレーションを駆使して探していく必要がある。
|