平成10年度は、昨年度に得られたコンパクトトーラス配位におけるバルーニングモードの安定性解析および3次元非線形シミュレーションの結果のまとめを行うと共に、新たに本研究課題の一環として次の2点について研究を行った。一つは、有限圧力プラズマの磁気流体(MHD)緩和化過程に関する理論共同研究を行った。その結果、磁気ヘリシティー保存の拘束条件下で、エントロピー生成率を極小化すると、有限の圧力勾配を持つ配位が実現され得るという結論が導かれた。また、この配位は熱エネルギーゼロの極限でTaylor状態と一致することが示され、より一般的な緩和理論であることが確かめられた。この結果は、すでに、論文にまとめられ出版されている。次に、プリンストン大学のMRX装置でのプラズマ合体実験に関して、理論解析およびMHDシミュレーションを行い、MRX実験の理論モデルを構築した。特に、MRX実験開始当初から発見されていたにもかかわらず、その原因が解明されていなかった磁気島の発生機構を、Taylorの緩和理論とシミュレーションにより解明することができた。また、MRX実験でコイル電流の極性や時間変動特性を変えたいくつかのオペレーションについても、それぞれの実験結果の相違を説明できる理論モデルを提出した。これにより、現在計画中のプラズマ合体を用いた高βプラズマ生成実験の理論的基礎が固められた。この結果は、平成10年11月のアメリカ物理学会プラズマ分科において発表され、さらに論文にまとめられて現在印刷中である。
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