研究概要 |
酸素イオン伝導体であるイットリア安定化ジルコニアなどの固体電解質は,固体酸化物燃料電池(SOFC)などへの応用が期待されている.SOFCは全て固体で構成されているので,電解質と電極材との整合性が必要で,我々は電極材料として,電解質材料である安定化ジルコニア(YSZ)をベースにした電子-イオン混合伝導体を用いることを考えている.しかしながら電子伝導性を向上させるにはYSZに添加する材料の濃度を高める必要があるので,整合性が悪くなる.そこでYSZに添加する材料の濃度を傾斜し,電極/電解質界面での整合性を良くすることが考えられる.本研究ではYSZに添加する材料としてCeO_2を取り上げ,CeO_2濃度を変化させた組成変調薄膜をレーザアブレーション法により作製し,電気的特性評価を行った. YSZ単結晶基板上に作製した薄膜は,いずれも緻密で基板に平行に(100)面が成長していた.また2次イオン質量分析器(SIMS)を用いて膜内のCeの分布を観察すると,薄膜内での組成の変化が確認できた.薄膜の面内方向の導電特性は傾斜化により,イオン導電率,電子導電率が共に増加し,全酸素分圧領域で電気特性が向上することが明らかになった.またSIMSと酸素の同位体^<18>Oを用いて組成変調膜内及び薄膜/基板界面における酸素の同位体拡散試験の結果,単一組成薄膜に比べ,拡散速度が向上することを明らかにした.以上の結果より,電極材に組成変調構造を導入することにより,SOFCの電気化学的特性を向上させることが明らかになった. 今後,さらに,SOFCへの組成変調した電極材の適用可能性について検討し,単セル試験を行う予定である.
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