高エネルギーイオンビームによる半導体超微粒子中の高密度励起効果に関する研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09780450
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 浅井 圭介 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (60231859)
• キーワード: 半導体超微粒子 / 高エネルギーイオンビーム / LB膜 / CdS

研究概要

ナノサイズのII-VI半導体超微粒子は、光学的非線形性などの特異な光物性を示すことからオプトエレクトロニクス材料として近年注目を集めている。一方、超微粒子の担持媒体としてLB膜層間を利用する方法は、半導体クラスター分子のmultilayer構築法として超格子材料への応用が期待されている。本研究では、このLB膜中に析出させたCdS超微粒子の高エネルギーイオン照射中および照射後の電子状態の変化について、高エネルギーイオン誘起発光、フォトルミネセンス(PL)測定により評価を行った。試料は、アラキン酸力カドミウムLB膜を室温(R.T.)と80℃でH_2S処理することにより作製した。イオンビーム照射にはVan de Graaff加速器からの1MeVH^+、PLは励起光としてHe-Cdレーザー(λ=325nm)を用い、それぞれ室温で測定を行った。吸収スペクトルから概算した平均粒径は、それぞれR.T.で22-24Å、80℃で31-36Åとなり、作製温度を変えることで異なる粒径の微粒子を作製できた。照射前に見られたバンドギャップ中のさまざまなトラップを介した発光は、ビーム照射後にはほとんどが消滅しごく浅いトラップサイトからの発光とエキシトン発光だけしか見られないようになった。このことはイオンビーム照射により、バンドギャップ中のトラップサイトがほとんど取り除かれたことを示唆している。さらに、このバンドギャップ中のトラップサイトが除去された微粒子表面でのCdSの光酸化過程における欠陥サイトの生成、相互の反応さらには安定化など起こりうる現象について、PLスペクトルの変化と対応させて考察を行った。

研究成果

• [文献書誌] T.Yamaki, T.Yamada, K.Asai, K.Ishigura and H.Shibata: "Ion Irradiation Effect on Diluted Magnetic Semiconductor Fine Particles Incorporated into L.B.Films" Thin Solid Films. (印刷中).
• [文献書誌] T.Yamaki, T.Yamada, K.Asai and K.Ishigure: "Diluted Magnetic Semiconductor Nanoparticles Fabricated by L.B.Techrigue" Thin Solid Films. (印刷中).
• [文献書誌] T.Yamaki, Y.Nakashiba, K.Asai, K.Ishigure, S.Seki, S.Tagawa: "Exciplex Emission from Ammonium-type Amphiphilic Polysilanes" Pacific Polymer Conference Preprints. Vol.5. 240- (1997)
• [文献書誌] T.Yamaki, K.Asai and K.Ishigure: "Changes in the Surface Electronic States of Semiconductor Fine Particles Induced by High Energy Ion Irradiation" Radiat.Phys.Chem.50. 199-205 (1997)
• [文献書誌] T.Yamaki, Y.Nakashiba, K.Asai, K.Ishigure, S.Seki: "Exciplex Emission from Amphiphilic Polysilare Beanng Ammonium Moieties" J.Nucl.Maten.248. 369-373 (1997)
• [文献書誌] T.Yamaki, K.Asai, and K.Ishigure: "RBS Aralysis of Langmuir-Blodgett Films Bearing Q-sized CdS Particles" Chem.Phys.Lett.273. 376-380 (1997)