本年度はレーザー光による原子炉燃料粉末の制御性試験、及び、サブミクロンオーダーの二酸化ウラン粉末に作用する光放射圧の数値シミュレーション解析を実施した。 制御性試験では、はじめに水中で二酸化ウラン粉末および二酸化トリウム粉末の光トラップ試験を実施した。その結果、二酸化トリウム粉末の三次元的光トラップが初めて観測され、一方、二酸化ウラン粉末に対しては、三次元的光トラップは観測されなかったものの、集光レンズの焦点が試料面より後方にあるときには、入射光の散乱力によって粉末は焦点方向に加速され、焦点近傍でそれらを回収することが可能であった。この回収操作は、レーザー光強度が十分であれば、高開口数の集光レンズを用いる必要がなく作動領域を広くとれるため、本研究の対象である気相中での原子炉燃料粉末の回収原理として採用した。従来、気相中でのレーザーマニピュレーション試験では、試料が試験セル壁面に強く吸着し、レーザー光による操作が不可能になることが問題であったが、本研究では圧電素子の音響振動を利用し、吸着している試験粉末を浮遊・分散させた。核燃料粉末の模擬物質として二酸化マンガン粉末を用いて、上記の原理に基づく気相中での回収実験を行った結果、粉末は焦点近傍で回収された。ただし、本実験ではレーザー光強度の制約により、高開口数(>0.1)の集光レンズを用いた。 また、一般化Lorentz-Mie理論に基づく光放射圧解析コードにより、サブミクロンオーダーの二酸化ウラン粉末に作用する光放射圧を解析した。その結果、集光レンズの焦点距離が非常に長い(〜100cm)場合でも、二酸化ウラン粉末にはビーム進行方向には前方に、これに垂直な方向にはビーム中心軸方向に光放射圧が作用することが示され、広範囲にわたる原子炉燃料粉末の回収の可能性が示唆された。
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