耐放射線性高分子材料開発に必要な基礎データの収集を目的に、ポリエチレンのモデル化合物として液体n-ドデカンを用い、種々の保護剤を添加した際の放射線化学反応の初期過程をナノ秒パルスラジオリシス法で追跡した。又、γ線照射による生成物分析も合わせて行った。 その結果、添加する保護剤の芳香族性が高くなるほどイオン化ポテンシャルや励起準位が下がり、中間活性種との反応性が増すことが示された。それにより、低級炭化水素などの分解生成物の収量が著しく抑えられることが分かった。又、ジフェニルアルカン化合物は熱化電子との反応性に乏しく、ベンゼンやテトラリンと同様の挙動を示すことが明らかになった。一方、アシトラセンは中間活性種との反応性に富み、分解を抑制する効果が高いことが分かった。 しかし、溶解性に問題があり、今後は、材料への溶解性に富む効果的な保護剤の開発が望ましい。 又、ピコ秒パルスラジオリシス法によりn-ドデカンカチオンラジカルからベンゼン、テトラリン、ナフタレンへの電荷移動速度定数を精度良く求めることに成功した。
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