核燃料再処理工場で生じるオフガス中に含まれる有害成分ある放射性クリプトンの吸着法による除去について検討を行った。再処理オフガスの吸着処理では、キセノンをはじめとする種々の共存ガスの影響が重要となるため、実際の系に即した多分吸着問題として化学工学的検討を行った。現在までに検討した共存成分はキセノン、窒素である。 ヘリウムガスをキャリアガスとし種々の着目成分を実験では流通式の固定充填層に導入した。活性炭、A型ゼオライトの吸着剤を用いて、クリプトン、キセノン及びその他の成分が共存する条件で、吸着破過実験及び脱着実験を行った。さらに上記の吸着剤の他に、アンバーソ-ブ、モルシーボン、モルデナイト等の吸着剤についても基礎的吸着特性を検討した。特にモルデナイトについてはイオン交換による改質処理を施しその吸着特性を検討した。 活性炭、A型ゼオライトにおけるクリプトンとキセノンの2成分吸着実験からキセノンが共存することによりクリプトンの吸着が大きく阻害されることがわかった。これらの2成分吸着平衡特性は空孔溶液理論を適用することにより良く表現できることがわかった。さらに、共存する窒素の影響についても検討を行い、キセノンほどではないがやはり窒素もクリプトンの吸着を阻害することがわかった。また、クリプトンと窒素の2成分吸着平衡も空孔溶液理論を適用することにより良く相関されることがわかった。 実験結果から得られた平衡吸着特性を使用し、吸着塔におけるクリプトン、キセノン及びその他の成分の挙動を予測できるシミュレーションコードを作成し、吸着速度の検討を行った。この結果、吸着量が大きくなる低温(-20℃以下)では、表面拡散の影響が大きくなり細孔拡散との並列拡散を考慮したモデルを用いた数値計算により吸着破過曲線をよく再現できることがわかった。
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