電子技術総合研究所において200×200μm^2の面積を有し、非常に優れた電流-電圧(I-V)特性を示すNb/Al・AlO_X/Nbトンネル接合が作製された。トンネル接合にX線が入射したとき、Nb電極で生成された準粒子の接合内におけるトンネル過程で電極間を移動する負電荷の電荷感応型前置増幅器による積分値が信号電荷となる。超伝導電流を抑制するための磁場の印加速度の違いにより、X線検出信号のパルス波高が異なる2つの安定な動作モードが観測された。 2つの安定な動作モードにおける電流-電圧(I-V)特性を測定したところ、それぞれのモードでI-V特性が異なることがわかった。このことから、トンネル接合の検出器としての動作モードはトンネル接合素子のI-V特性に強く依存することが考えられ、I-V特性を定量的に評価するためのモデル化を行い、Sine-Gordon方程式を数値的に解く計算コードを作成した。本研究で作成した計算コードを用いてトンネル接合素子のI-V特性の印加磁場の大きさ及び方向に対する依存性を、Sine-Gordon方程式を用いて解析した。計算から、印加する磁場の非常に微小な差で、トンネル接合内の準粒子系の位相と外部からの電磁場との共鳴モードが大きく変化することがわかった。測定値と計算値を比較すると、印加磁場は、トンネル接合に対して88.8°の角度で、高いモードと低いモードにおける差がわずかに0.6Gと微小であっても、バイアス点近傍の動作抵抗は、それぞれ85kΩ及び13kΩと大きく異なった。この動作抵抗の違いは実験結果を良く説明することができた。つまり、検出器のバイアス点近傍における動作抵抗の変化が、電荷感応型前置増幅器で回収される電荷数の差がパルス波高に影響することが分かった。
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