本年度は、2年計画の最終年である。本年度は、熱負荷を受けたサンプルの材料科学的な評価を完成するために、電子ビーム照射による熱負荷を受けたタングステンコーティング炭素材に対して、断面の接合界面部における組成・組織観察を行い、高温下における物質移動・組織安定性について調べた。試料は、炭素材の表面に、多層構造をした緻密なW/Reを被覆し、その後、プラズマスプレイにより厚いタングステンを被覆した。各種の組成分析及び硬度測定の結果、高温時、炭素材のカーボンがコーティング層に拡散するが、炭素材表面に被覆された、拡散係数の低いRe層が、最初に、炭素の拡散バリアとなる。さらに、Reに隣接する第一層のタングステンにタングステンカーバイドが形成される。この部分にタングステンが蓄積されると共に、タングステンが、カーバイド化されると拡散の活性化エネルギーが大きくなり炭素の拡散バリアとなる。これらにより、プラズマスプレイにより被覆された厚いタングステン部分に、脆いタングステンカーバイドが形成されることを抑制することが明らかとなった。電子ビーム加熱後では、表面温度が、2800℃程度まで加熱された試料では、接合界面での多層の構造が変化し、合金が形成されているが、構造は、層状となっている。表面が、溶融した試料では、界面での多層構造が消失し、広い領域にわたり、新しい組織が形成されている。このような高温で使用するためには、さらに、カーボンの拡散バリアとなる層を被覆すれば、高温特性がさらに良好になるもとの考えられる。また、水素同位体及びヘリウム粒子負荷による材料損傷についても実験を行った。特に、ヘリウムの場合、タングステン中の欠陥との結合が強く、高温まで、材料に残留し損傷・損耗に影響を及ぼすことが明らかとなった。
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