核融合次期装置のプライズマ第一壁候補材として注目されている高融点金属材料(タングステン、モリブデン)中の水素溶解挙動を調べた。本年度は、まずこれからの金属粉末そのものと、実機使用での炭素による汚染を想定し、炭素含有率を変化させた金属炭化物中への水素溶解度と溶解速度の測定を行なった。炭化物は、これからの粉末と熱分解黒鉛粉末を真空焼鈍して作製し、粉末X線回折によりその形成と残留炭素量を定量した。タングステンは、1550℃以上、モリブデンは1400℃以上で概ねそれぞれの炭化物となることが確かめられた。タングステンやモリブデン粉末は、当初数十ppm程度の水素溶解度を持ち、十分な高温で炭素と反応させると水素溶解度がほとんど0となる。しかし反応が十分でなく未反応炭素が存在するとその量に応じて比較的高い水素溶解度を示した。また、塊状の高融点金属に比べ粉末の場合は、20倍以上の水素溶解度が得られた。この事から清浄な高融点金属に対し、炭素や酸素による汚染(炭化や酸化)があると水素溶解度が著しく上昇する可能性があることがわかった。また、炭化反応が十分に進行し、著しく水素溶解度の低い炭化物が表面に形成されれば、水素吸収速度が約1桁減少することも明らかになった。これらの成果は、第8回核融合炉材料国際会議、日本原子力学会1998年春の年会において発表し、Journal of Nuclear Materialsに掲載される。
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