本研究においては、大きく分けて三つの観点からセンサーを構築した。 まず第一に酸性雨中の主成分測定用微生物センサーの開発を行った。酸性雨成分としてもっても多く雨中に含まれるものは硫酸イオンと硝酸イオンである。前者を測定するために、硫酸イオン存在下で鉄酸化能が促進される鉄酸化細菌Thiobacillus ferooxidansを酸素電極上に固定化し、硫酸センサーとした。このセンサーは硫酸イオンに対して十分な感度を持っており、その応答は共存する硝酸イオンや塩化物イオンによって妨害されないことがわかった。 第二に、微量成分測定用酸素センサーの開発を行った。酸性雨中の亜硝酸イオンや亜硫酸イオンは微量成分として考えられ、環境に負荷を与えることが十分考えられるにも関わらず、本格的な測定が行われていない。そこでこれらのイオンを測定する酵素センサーを構築した。Alcaligenes faecalis S-6由来の亜硝酸還元酵素を金電極上に固定化し、亜硝酸センサーとした。メディエーターとして1-methoxy PMSを用いた。その結果、従来法であるJIS法と同程度の感度で亜硝酸イオンの測定が可能になった。また、亜硫酸酸化酵素を用いて、化学発光法により亜硫酸イオンを測定するバイオセンサーを開発した。その結果世界でもっとも高感度な亜硫酸イオンセンサーの構築に成功した。 第三に、上記のバイオセンサーでは解決できない安定性を補うものとして、窒素化合物イオン測定用化学センサーの開発を行った。本センサーはデバルダ合金を用いて測定対象である窒素化合物イオンをアンモニアに還元し、ガス透過性膜を通過させ、蛍光試薬と反応させて蛍光法で測定するものである。20種類以上の河川水サンプル中の硝酸イオンの測定を行った結果、従来法によって測定した値とほとんど同じ結果が得られた。
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