地下水中に含まれる温室効果ガス、メタンの起源および動態の解明を目的として、本年度は、愛知県内の農業用地下水から選定した浅層地下水8点、深層地下水5点について、メタン濃度の年間変動、メタンの炭素安定同位体比(δ^<13>C)およびメタンの生成活性、分解活性を調べた。メタンの起源のひとつとして水田土壌中で生成したメタンの下方への浸透の可能性を考慮し、浅層地下水については、井戸の周辺が水田であるところと畑地あるいはビニールハウスであるところをそれぞれ4点ずつ選んだ。浅層地下水5点において、メタン濃度の変動が確認され、2点において最低値と最高値の間に3倍の差が認められた。メタン濃度の変動が大きかった地点の土地利用はいずれも畑であった。また、メタン濃度の変化とpH、 Eh、DOC、SO_4等の各種アニオン濃度、FeやMn等の各種カチオン濃度の変化の間にはいずれも相関は認められなかった。各地点から採取した浅層地下水をそのままあるいは基質として酢酸(Na塩)、CO_2/H_2、グルコースをそれぞれ添加してインキュベーションした結果、メタン濃度の高かった4点から、CO_2/H_2を添加したときのみ、多量のメタン生成が検出され、CO_2/H_2のメタン生成菌の存在が確認された。一方、酸素存在下でのメタン酸化活性は認められなかった。メタン生成能が確認された地下水中のメタンのδ^<13>C値は、-71.4ないし-74.0‰と低く、CO_2/H_2系のメタン生成菌によってメタンが生成されたこと、また、分解がほとんど起こっていないことが裏付けられた。水田土壌中のメタンのδ^<13>C値は-45から-53‰であり、水田由来メタンが地下水中のメタン濃度に及ぼす影響はほとんどないものと推定された。
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