研究概要 |
生物試料中総スズの定量法を誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて検討した。生物試料を硝酸で湿式加熱分解し、溶液化したものを分析に供試した。本分析法における各種酸の影響を調べたところ、塩酸濃度の上昇に伴い、測定したすべてのスズ同位体のイオン強度が増加した。一方、硝酸の添加では、イオン強度に変動は見られなかった。また、塩酸共存によるイオン強度の変動は、一定量の硝酸添加で抑制することができた。スズ検出における同重体イオンの影響は、^<110>Snに対するカドミウムの正の干渉以外見られなかった。生物標準試料s(NIES No.11 Fish Tissue,No.6 Mussel,No.5 HumanHair)を用いて、本分析法の精度を検証したところ、公表されたスズ濃度の参照値とほぼ一致した。乾物試料約100mgを硝酸でマイクロ波加熱分解し、純水で10mlにした場合、本分析法の検出限界は、10ng Sn/g-d.wであった。以上の検討により、本分析法は十分な精度と感度で、環境生物試料の総スズを定量できると結論された。
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