東アジア地域から排出されるSO_2、NOx、HC_S等の大気汚染物質は、OH、HO_2、RO_2といった含酸素ラジカル種との光化学反応により、強酸性のH_2SO_4やHNO_3、アルデヒド、酸化性ガスであるO_3、有機過酸化物やH_2O_2を生成し、日本上空へ長距離輸送されて大気の酸性化・酸性雨の問題を引き起こしている。本研究では、拡散スクラバー法を用いた大気中HNO_3、HCHO、CH_3CHOの自動連続モニタリング装置を開発し、中国と日本の中間に位置する沖縄において、1998年7月より、大気中HNO_3、HCHO、CH_3CHOの連続モニタリングを開始した。その結果、1998年7月〜12月31日の期間に観測されたHNO_3、HCHO、CH_3CHOの月別平均濃度はそれぞれ、0.009〜0.07ppbv(n=1392)、0.29〜1.09ppbv(n=2189)、0.35〜1.06ppbv(n=1994)とバックグラウンド地域としては比較的高濃度を示し、中国等の東アジア諸国からの大気汚染物質の長距離輸送による大気中HNO_3、HCHO、CH_3CHO濃度の増加が示唆された。また、後方流跡線解析の結果、特に台湾上空を通過した気塊におけるHNO_3、HCHO、CH_3CHO濃度が高くなることがわかった。また、大気中HNO_3、HCHO、CH_3CHO濃度を、NOx、HC_SやOHを考慮した定常状態近似モデルを検討し算出した結果、モデルによる計算値と実測値はほぼ一致し、今後、長距離輸送による大気汚染の実態を予測する上で、極めて重要なデータと成り得ることができた。
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