研究概要 |
同位体交換反応におけるトリチウム水(HTO水)中のOT^-の挙動を明らかにする目的で、OT-for-OH型の同位体交換反応の研究を行ってきた。本研究では,これをさらに推し進め,強塩基性の陰イオン交換樹脂Amberlite IRA-400およびBiorad 1x2,1x4,1x8を用いて,これらの樹脂とHTO水との間のOT-for-OH同位体交換反応を行い,陰イオン交換樹脂の反応性に及ぼす温度および架橋度の影響を検討した。さらに,いくつかの金属水酸化物[アルカリ土類/Fe(II,III)]とHTO水との間のOT-for-OH同位体交換反応を行い,各種金属水酸化物中に取り込まれるOT^-量を見積もった。 上記のことより,以下のことが明らかになった。(1)陰イオン交換樹脂(および金属水酸化物)とHTO水との間で原子団としての同位体交換反応が起こる。(2)この交換反応における陰イオン交換樹脂の反応性は,20℃から40℃までは大きくなったが,40℃を超えると小さくなった。HTO水の解離は,温度とともに大きくなることが知られているため,これは,温度が高くなるにつれ,“T^++OH^-"への解離の方が“H^++OT^-"への解離よりも優勢であることによると考えられる。(3)樹脂の架橋度が大きくなるとOT-for-OH交換反応は起こりにくくなる。(4)アルカリ土類金属において,金属イオンの電気陰性度が大きくなるにつれ,そのイオンを含む水酸化物中に取り込まれるOT^-量は小さくなった。(5)水酸化鉄において,OT-for-OH交換反応の起こり易さを相互比較すると,Fe(OH)_3:Fe(OH)_2=1.2:1となり,1.5:1とならなかった。このことも,各鉄イオンの電気陰性度の大きさと関連がある可能性が大きい。(6)金属水酸化物中に取り込まれるOT^-量も30℃に比べて70℃において小さくなった。
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